うんこみたいな日々

を過ごす。

ガラケー任期満了

2年間使用したガラケーを解約した。そしてスマホを買う。


手続きが大変大変。

MNP転出だの、身分証明だの上の空。

Web上で保険証の撮影ボタンを押すと何故か最初の入力画面へと何度もループしてしまい、発狂寸前。

問い合わせても原因不明。もう全裸で部屋の中を暴れまわってやろうかと思った。


結局はショップへの来店を促されて一から店員さんと手続き。


何故ガラケーを使用していたのか。


まず、元々使用していたスマホの端末をWi-Fi下で使用できればWEB系は充分だろうと思った。その端末もボロボロだ。


6年以上、電力の消費を重ねたバッテリーは充電を止めた瞬間に電源が落ちるまでイカれてしまった。モバイルバッテリーが命綱だ。


スマホが悲鳴を上げる状況で何度もハレンチな動画を見た。人間で言うと点滴をつけながらサッカーしているとても危険な状態だ。


視聴中に画面が固まった時は全力でスマホを鼓舞する。


「今、誰かに見られたら確実に何かを失う...。蘇れ!!ハッ!!頑張れぇぇえ!!」


人類史上最もマヌケな姿かもしれない。


その度、命を吹き返してくれたボロボロの彼を畏敬している。

今日をもってハレンチ動画担当大臣の座を退く。お務め御苦労。ありがとうございました。


ガラケーを購入したのが19才。あれから良くも悪くも現実感を取り戻した。


元々、中学でiPhone4sを母親に買ってもらうまで我が家にはインターネットという概念がなかった。

初めて検索した単語は


"阪神タイガース"


今でも忘れない。その日、小さな画面の中で世界が驚くほど広がった。


暇があれば何かを検索する。そこから高校生にかけて本当の自分は3次元ではなく、スマホの中に存在した気がした。思春期のあの膨大な時間を一体どれほどスマホの中で過ごしたんだろう。もはやタイムラインで何か呟くために現実世界を生きる。常に頭の片隅にネットワークが張り巡らされていた。

 


良くも悪くも恐ろしい。高校生の頃、そんな日々に危惧感を覚えた。

 


インターネットと距離をとって気づいた事。どうやら自分は二次元の中でお互いダイレクトに通じ合うよりも、一つのフィルターを通して人と繋がる方が好きらしい。


タイムラインを覗けば誰かいる、分からない事があれば思考を省いて答えを調べられる、鼻くそをほじりながら匿名で悪口を書く事だって可能だ。友達だって探せるし、マッチングアプリとやらも有効だと聞く。ネットの中は非常に便利でついつい依存してしまう。

 

 

反面、省かれた手間や人生の半分以上を過ごしたネットとは無縁の日常から目を背け続けてしまう事にとてつもない不安を感じる。

 

 

芸術は受け取り方次第だ。M-1だって個人にとって優勝者が一番面白いとは限らないし、映画や絵だって深く考察して誰かに話してくれる人がいれば、片手間に大まかな内容を楽しむ人だっている。漫画を泣きながら読む人もいれば、エッチなシーンを探すために流し読みする小学生みたいなスケベがここにいます。

見つけ出した時は飛ばしたページを読むはずの集中力がエッチなシーンのみに注ぎ込まれる。
ちなみにエロ漫画を読めばいいじゃないかという意見は受け付けない。あくまで本筋がエロであってはダメなのだ。

 


エロの話はいい。脱線してしまいました。

 


ワイドショー番組でコメンテーターが覚醒剤の呼称を"おならプープー剤"にすれば誰もやらないと言ってた。周りの出演者が笑う中、ひたすら真摯に訴えかける姿を見て朝までこの人の話を聞いてたいと思った。


休み過ぎて学校行き辛いなと思いながら夜更かしして布団の上で聴いていた深夜ラジオのパーソナリティが言った。

「貴女に話しかけています」


当時観ていたドラマが月9史上最低の視聴率を叩き出した。吃音症の主人公がカウンセリング中に一言も喋れず泣き出してしまう。科白はない。お芝居をしたいと思った。

 


演劇を観て、舞台上と自分の心境がリンクして情けない程に泣いた。あの脚本家は自分のために直接メッセージを投げ掛けているのだと本気で思った。

 


シャーペンの発明者は鉛筆の愛用者だ。
クリエイティブな発想はアナログから生まれる。

 


最先端のテクノロジーを駆使する同世代を一歩引いた所で見たかった。この景色は十分堪能した。

 


友達に地図案内を任せっきりにした時間も、先輩に居酒屋を探してもらった時間も、PDFの操作が困難で台本が追い付かず稽古を止めてしまった時間も、必要だったと思いたい。

 


今はスマホが必要だと感じたけど、ガラパゴスさんの程よく制限された使い心地がとても好きなのでまたいつかお世話になるかもしれない。販売が終了するという噂をよく聞くけど4G対応製品は続くらしいです。

 


スマホ全般の設定を終えて、ガラケーに残った情報を確認するため画面を開く。
文字を押す度に「カチカチ」となる音が既に懐かしい。少し切ない。


2年間、ご苦労さまでした。